今回は2018年1月31日にベネズエラ政府が発表した仮想通貨『Petro』のホワイトペーパーから概要を紹介します。
日本やアメリカをはじめ、先進国では一時的にビットコインや仮想通貨への風当たりが強くなっています。今回ベネズエラは世界で初めて国家によるICOを実施しますが、この背景や狙いは何なのでしょうか。
この記事の目次
そもそもベネズエラって知ってますか?
ベネズエラは正式名称をベネズエラ・ボリバル共和国(Bolivarian Republic of Venezuela)といい、南米のコロンビアの隣、ブラジルの北に位置します。野球が盛んな国として有名で、日本の横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督はベネズエラ出身です。
ベネズエラは天然資源が豊富で、特に石油がよく採れる国として有名です。
石油が採れる国、というと中東諸国の豊かなイメージがありますが、ベネズエラはここ数年経済政策の失敗により貧富の差の拡大や政情不安が進み、国としては危機的状況にあります。
Petroとは?
そのような状況で発表されたPetroは、一体何を狙いにしているのでしょうか。
ホワイトペーパーによると、Petroはベネズエラが発行する、石油資産に裏付けられた仮想通貨、と定義されています。これだけだと単なる法定通貨と変わりませんが、Petroの狙いは『開発途上国間の成長と交流に協力的、自律的、好都合な、より公正なグローバルな金融システムの出現を刺激すること』で、ベネズエラがそのハブになる、とうたわれています。
Petroを誰が管理するのか?
技術的には、Petroはイーサリアムベースで発行されます。ただベネズエラ政府が管理をするということなので、ビットコインのような非中央集権型の通貨ではなく、一種のプライベートブロックチェーンといえます。
Petroの価格ロジック
石油とボリバル(ベネズエラの法定通貨)により決定されるそうで、以下の式が定義されています。
Petroの売り出しについて
当初発行され販売されるPetroの総量は1億PTRで、プライベートプレセールとICOの2段階で販売される予定です。ICOは2018年3月20日から開始されますが、その前にプライベートセールが2月20日から開始されます。プライベートセールでは38,400,000PTRが、ICOでは44,000,000PTRが売り出されます。
またPetroは当初はベネズエラの法定通貨(ボリバル)での購入はできず、ドルやビットコインでの購入になるそうです。
調達された資金の用途
ホワイトペーパーでは、調達した資金のうち55%がベネズエラの政府系ファンドに、ほかがプロジェクトや開発に充てられるとされています。
Petroの本当の狙いとは?
ホワイトペーパーには様々書いてありますが、Petroの狙いは『アメリカに規制されない資金調達』にあります。
ベネズエラはアメリカから経済制裁を受けており、債券取引などを自由に行うことができなくなっています。法定通貨であるボリバルがこのような状況で強いインフレを起こしている中で、経済を立て直すには外貨の獲得が必要になっていると思われます。
旧来の金融市場ではどうしても先進国の影響が強いため資金調達が難しい中で考え出されたのがICOなのでしょう。
まとめ
個人的には、ホワイトペーパーに記載されているような、途上国のための先進的な金融システムがこのPetroのICOだけで実現するとは思えません。ただ、既に資金の拠出を表明している企業などもあるということなので、少なくとも先進国に左右されない資金調達の道筋はつけられるのかもしれません。
後続するような国家レベルの取り組みが出てくるのか、も注目です。