今回は2017年11月12日のビットコインキャッシュの暴騰の背景について紹介します。
併せて、ビットコイン含め仮想通貨には欠かせない概念であり、今回の背景に大きく関わる『マイニング』『ハッシュレート』『ディフィカルティー』についても紹介します。
まずは本題に入る前に、押さえておくべき基本的な概念について紹介します。
マイニング(採掘)とは
このブログでも何回か『マイニング』という言葉を出していますが、これについて解説しておきます。マイニングとは採掘のことを指しますが、別に実際に何かを掘るわけではありません。
ビットコインについての記事でも書きましたが、ビットコイン(や他のマイニング可能な仮想通貨)は様々な送金トランザクションを承認するマイナーがいて初めて取引が成り立ちます。マイナーはトランザクションをまとめるブロックを生成してトランザクションを承認するのと引き換えに、ビットコインや仮想通貨を手に入れます。この行為をマイニングと呼びます。
ブロックを生成、と簡単に書きましたが、これには大量の計算が必要になるため、それができるハードウェアと大量の電気が必要になります。
ハッシュレートとは
ビットコインをはじめとする仮想通貨のマイニング速度のことを言います。hash/s(1秒間に1ハッシュの意)という単位で表されますが、通常はM(メガ), G(ギガ), T(テラ)など接頭辞と併せて使います。メガバイトとかテラバイトという言葉がパソコンのメモリなどでよく使われますが、似たような感じでMHs(メガハッシュ)等表現されます。
では、ハッシュレートが高い/低い、というのは何を意味するのでしょうか?
ハッシュレートが高いというのはマイニングの速度が速いということ、つまり取引の承認がそれだけ速いということになります。
マイナーが多ければ当然マイニング1単位あたりにかかる時間は少なくなるのでハッシュレートは上がります。つまり、ハッシュレートが高いというのはそれだけマイナーが集まっていること、逆は逆でマイナーが少なくなっていることを意味します。
マイナーは当然報酬であるビットコインや仮想通貨が効率的に手に入る方が嬉しいので、マイニングの難易度が低くて報酬が高い通貨を選ぶのが合理的です。
つまりマイナーが集っているというのは、それだけ効率的に報酬を得られる、ということなのです。
ディフィカルティー(採掘難易度)とは
マイニングは要は採掘なのですが、ハードウェアと電気を用意したら終わりではありません。マイニングには大量の計算が必要ですが、その計算の難易度をディフィカルティーと呼びます。
ディフィカルティーは通常、マイナーが増えれば増えるほど競争が激化するので上がるようになっています。
例えば今ビットコインを採掘するのは個人ではほぼ不可能と言われています。なぜならマイナーが増え、難易度が上がるとともに必要になるハードウェアの性能や電気代が莫大なものになってきたからです。
実例 ~11月12日、ビットコインとビットコインキャッシュに何が起こったのか~
基本的な概念につきかいつまんで説明したところで、これらが実際のビットコインや仮想通貨の値動きに大きく寄与した実例として、11月12日のビットコインキャッシュの暴騰の背景を紹介します。
1.ビットコインキャッシュの価格暴騰
冒頭に触れたように、11月12日にビットコインキャッシュが暴騰し、一時は30万円台をつけて大盛り上がりになりました。
価格の暴騰については原因は定かではないですが、Segwit2xが延期になったことで、Segwit2xに好意的であった、つまりビットコインのブロックサイズを大きくすべしと考えていた投資家がビットコインキャッシュに乗り換えた、等が一説として挙げられています。
2.マイナーの移動
1に伴い、マイナーの大移動が起こってハッシュレートがビットコインとビットコインキャッシュで初めて逆転するという事態が起きました。
ここには以前の記事で触れた『EDA』という、ビットコインキャッシュのハードフォークの基になったアルゴリズムが関係してきます。
要はこの価格暴騰と同タイミングでビットコインキャッシュは、ディフィカルティが相対的に低い状態にありました。
なので、要はビットコインをマイニングするより、ビットコインキャッシュをマイニングするほうが大きく効率的な状態になっていました。
加えて『EDA』はハードフォークによる調整が入ることになっていたので、駆け込み的な動きもあったと思われます。
3.1と2の循環による価格暴騰
1と2の循環が、1日で3倍もの価格暴騰を生んだといえます。これに反比例するようにビットコインは20%ほど値段が下落しました。
一方ビットコインキャッシュで生成されたブロックは容量が空っぽに近いものが多かった、つまりマイナーの投機的な動きで10兆以上のビットコイン資産の価値を不安定にしたと疑われたことから、特に企業マイナーを非難する声もありました。
いずれにしても、マイナーの移動でこれだけハッシュレートが変わる、というのはこれまでの仮想通貨ではなかった動きで、とても歴史的なものと言えます。
まとめ
一般的にビットコインや仮想通貨を売り買いするだけなら、特にマイニングやハッシュレートの概念を知らなくてもできます。
ただビットコインキャッシュの場合のように、マイナーの動き方等によって通貨に影響が及ぶケースは今後増えてくると想定されます。そんな場合に背景を把握しながら動き方を決める、という観点では、概念を押さえておくことは重要といえます。